英中銀総裁が衝撃の告白「ネットゼロは経済を減速させる」

2026年01月22日 06:40

Sophonnawit Inkaew/iStock

先週、イングランド銀行のアンドリュー・ベイリー総裁が、「ネットゼロ政策は世界経済を減速させる」と発言しました。英国の中央銀行総裁が、脱炭素政策そのものを成長阻害要因として公に認めるのは極めて重大なニュースですが、相変わらず日本の大手メディアはまったく報じてくれません。

ベイリー総裁は、ネットゼロに向けたエネルギー転換や規制対応が、供給制約やコスト上昇を通じてインフレ圧力を高め、結果として成長率を押し下げていると述べています。これは世界中で金融・政策当局が喧伝してきた「脱炭素対策は経済成長と両立する」という建前を撤回したに等しい驚天動地の発言です。

ここで重要なのは、イングランド銀行こそが中央銀行による気候介入、いわゆる脱炭素金融を世界に広めた張本人だという点です。

2013年から2020年まで総裁を務めたマーク・カーニー氏(現カナダ首相)は、気候変動リスクを金融安定の中核に据え、中央銀行がネットゼロを主導すべきだという世界の潮流をつくり出しました。そのカーニー氏から引き継いだベイリー総裁が「ネットゼロは経済の足を引っ張る」と認めたのです。

一方、我が国では日本銀行が気候変動オペ(気候変動対応を支援するための資金供給オペ)を継続し、GPIFもESG指数を年金運用に組み込み続けています。日本政府もGX(グリーントランスフォーメーション)で脱炭素と経済成長の両立をめざすなどといまだに言っています。

なお、カーニー氏は国際的なネットゼロ金融ネットワーク「ネットゼロのためのグラスゴー金融同盟(GFANZ)」の設立者としても知られています。その後、GFANZの傘下組織としてつくられたNZBA、NZAMIなどにこぞって日本の金融機関が参画し、融資先である日本企業にもネットゼロが強制されることにつながりました。

しかしながら、カナダ首相になった2025年に変節し、カナダ国内で炭素税の廃止、EV義務化見直し、化石燃料への投資再開など、ネットゼロを否定する政策を次々と打ち出しています。

昨年は、あのビル・ゲイツ氏が気候危機・脱炭素の主張を転換したことが大きな話題になりました。

さらに、世界中の金融機関がESG投資の根拠として参照してきた「金融システムグリーン化ネットワーク(NGFS)」シナリオが科学誌ネイチャーから欠陥論文として撤回されました。このNGFSシナリオは当然、GPIF、MUFG、日本生命、SOMPOなど日本国内のほぼすべてのESG商品も採用しています。

日本の政策当局や金融当局、機関投資家は、海外の成功例だけを都合よく引用するのではなく、上述のような“都合の悪い現実”にも正面から向き合うべきではないでしょうか。脱炭素金融の旗振り役だった英国中央銀行が現実を認めた今、日本の金融関係者も虚心坦懐に見直すべき時期が来ているはずです。

 

This page as PDF

関連記事

  • 今回はマニア向け。 世界の葉面積指数(LAI)は過去30年あたりで8%ほど増えた。この主な要因はCO2濃度の上昇によって植物の生育が盛んになったためだ。この現象は「グローバルグリーニング」と呼ばれる。なお葉面積指数とは、
  • シンクタンク「クリンテル」がIPCC報告書を批判的に精査した結果をまとめた論文を2023年4月に発表した。その中から、まだこの連載で取り上げていなかった論点を紹介しよう。 ■ IPCC報告における将来の海面上昇予測が地点
  • COP26におけるグラスゴー気候合意は石炭発電にとって「死の鐘」となったと英国ボリス・ジョンソン首相は述べたが、これに反論して、オーストラリアのスコット・モリソン首相は、石炭産業は今後も何十年も事業を続ける、と述べた。
  • 前代未聞の原発事故から二年半を過ぎて、福島の被災者が一番注意していることは仲間はずれにならないことだ。大半が知らない土地で仮の生活をしており、親しく付き合いのできる相手はまだ少ない。そのような状況では、連絡を取り合っている元の町内の人たちとのつながりは、なにより大切なものだ。家族や親戚以外にも従来交流してきた仲間とは、携帯電話やメールなどでよく連絡を取り合っている。仕事上の仲間も大切で、暇にしていると言うと、一緒に仕事をやらないかと声を掛けてくれる。
  • 女児の健やかな成長を願う桃の節句に、いささか衝撃的な報道があった。甲府地方法務局によれば、福島県から山梨県内に避難した女性が昨年6月、原発事故の風評被害により県内保育園に子の入園を拒否されたとして救済を申し立てたという。保育園側から「ほかの保護者から原発に対する不安の声が出た場合、保育園として対応できない」というのが入園拒否理由である。また女性が避難先近くの公園で子を遊ばせていた際に、「子を公園で遊ばせるのを自粛してほしい」と要請されたという。結果、女性は山梨県外で生活している(詳細は、『山梨日日新聞』、小菅信子@nobuko_kosuge氏のツイートによる)。
  • 11月7日~18日にかけてエジプトのシャルム・アル・シェイクでCOP27が開催され、筆者も後半1週間に参加する予定である。COP参加は交渉官時代を含め、17回目となる。 世界中から環境原理主義者が巡礼に来ているような、あ
  • 英国イングランド銀行が、このままでは気候変動で53兆円の損失が出るとの試算を公表した。日本でも日経新聞が以下のように報道している。 英金融界、気候変動で損失53兆円も 初のストレステスト(日本経済新聞) 英イングランド銀
  • ゼレンスキー大統領の議会演説は、英米では予想された範囲だったが、ドイツ議会の演説には驚いた。 彼はドイツがパイプライン「ノルドストリーム」を通じてロシアのプーチン大統領に戦争の資金を提供していると、かねてから警告していた

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑