気候カルテルの中にもいる頓馬さん

Edgar G. Biehle/iStock
引き続き、2024年6月に米下院司法委員会が公表した気候カルテルに関する調査報告書についてお届けします。
(前回:「ESGに取り組まないと資金調達ができない」はフェイクだと米下院が暴露)
今回は少しだけ心温まるお話をご紹介します。
Arjuna Capital, LLC(Arjuna)は小さな株式を保有しているが、企業に過酷な要求を行う。
(中略)
Arjunaは、Climate Action 100+とNZAMの両方のメンバーである。
(中略)
Arjunaは特に化石燃料企業と積極的に交渉し、企業を破壊しようとしている。
確立された企業法の原則によれば、「取締役は、株主の最善の利益のために行動する受託者責任を負っている」。
(中略)
しかしArjunaは「石油会社は1.5度の地球温暖化の閾値内でのみ『利益を最大化』することしかできず、それを超えてはならない」と考えている。したがって、Arjunaはエクソンとシェブロンで少数の株式所有権を行使し、これらの企業を根本的に変えるような変化を迫った。
2021年、Arjunaは米国第2位の石油会社であるシェブロンに過激な株主提案を提出した。
(中略)
Arjunaの提案する変革は、企業としての長期的な利益に反するとしても、シェブロンが「平均気温を1.5℃に抑えるために必要な措置(化石燃料生産の削減など)」を講じる必要があるとしている。
シェブロンの株主は、97対3の投票でArjunaの提案を拒否した。
ひるむことなく、Arjunaは2024年の株主総会で、エクソンモービルに対し「排出削減のペースをさらに加速させる」ことを要求する株主提案を提出した。排出削減のペースをさらに加速させるとエクソンが明言していたにもかかわらず、Arjunaは提案した。エクソンの株主は2022年と2023年の両方で「同様の提案を全面的に拒否した」にもかかわらず、同じ主張をした。
エクソンは、Arjunaの提案に異議を唱える訴訟を起こした。Arjunaの提案はエクソン経営陣のビジネス判断に直接干渉し、エクソンのコアビジネスであるエネルギーおよび石油化学製品とサービスを細かく管理し、経営陣と取締役会の役割を奪い、Arjunaが好む政策を押し付けようとしているとエクソンは説明した。
これに対し、Arjunaは株主提案を撤回した。
しかし、2024年5月22日、裁判所はArjunaの却下申し立てを却下し、エクソンモービルの訴訟を進めることを許可した。
裁判所は、「Arjunaは『トロイの木馬』モデルに従っており、さまざまな企業で議決権を持つための株式を集め、大手石油会社の温室効果ガス排出を削減するための提案を提出している」と説明し、エクソンモービルの立場は、大手石油会社に断固反対する団体に対する合理的な対応である、と判定した。
※ 上記引用箇所の太字は筆者
数年にわたって出した株主提案をすべて拒否され、企業側から提訴されたらすぐに株主提案を取り下げただけでまったく理念も信念も存在しない行動です。さらに株主提案の却下を裁判所が認めてくれずに訴訟が進められたのだとか。
米国下院から過激な犯罪者と名指しされた気候カルテルの中にも、このような頓馬なメンバーがいることを知りました。この程度の連中であれば企業としても与しやすいのですが、ビジネスに集中して生産性を上げESG投資家を除く大多数の株主に報いなければならない企業にとって迷惑千万であることに変わりはありません。
■

関連記事
-
前回の本コラムで、ドイツで言論統制が進みつつある実情に触れ、ジョージ・オーウェルの「1984年」を読み直したいと書いた。その後、私は本当に同書を50年ぶりで読み返し、オーウェルの想像力と洞察力に改めて驚愕。しかも、ここに
-
2025年までに1000億ドルに成長すると予測されるバッテリー産業だが、EVの「負債」について複数の報告書で取り上げられていた。 (前回:「2035年の新車販売はEV!」への邁進は正しい選択なのか?①) グリーンエネルギ
-
原子力規制委員会は、今年7月の施行を目指して、新しい原子力発電の安全基準づくりを進めている。そして現存する原子力施設の地下に活断層が存在するかどうかについて、熱心な議論を展開している。この活断層の上部にプラントをつくってはならないという方針が、新安全基準でも取り入れられる見込みだ。
-
元静岡大学工学部化学バイオ工学科 松田 智 これまで3回にわたって、筆者は日本の水素政策を散々にこき下ろしてきたが、日本政府はまだ全然懲りていないようだ。 「水素に賭ける日本、エネルギー市場に革命も」と言う驚くべき記事が
-
田中 雄三 国際エネルギー機関(IEA)が公表した、世界のCO2排出量を実質ゼロとするIEAロードマップ(以下IEA-NZEと略)は高い関心を集めています。しかし、必要なのは世界のロードマップではなく、日本のロードマップ
-
内閣府のエネルギー・環境会議が出した「選択肢」を見て、少しでもエネルギーを知るものは誰もがあきれるだろう。稚拙すぎるのだ。そこで国民の3つの選択肢のひとつとして「原発ゼロ」が示されている。
-
東京で7月9日に、新規感染者が224人確認された。まだPCR検査は増えているので、しばらくこれぐらいのペースが続くだろうが、この程度の感染者数の増減は大した問題ではない。100人が200人になっても、次の図のようにアメリ
-
【要旨】(編集部作成) 放射線の基準は、市民の不安を避けるためにかなり厳格なものとなってきた。国際放射線防護委員会(ICRP)は、どんな被曝でも「合理的に達成可能な限り低い(ALARA:As Low As Reasonably Achievable)」レベルであることを守らなければならないという規制を勧告している。この基準を採用する科学的な根拠はない。福島での調査では住民の精神的ストレスが高まっていた。ALARAに基づく放射線の防護基準は見直されるべきである。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間