ダボスで米国が欧州のエネルギー政策を猛烈に批判

The White Houseより
ダボス会議で、メディアが注目したのはグリーンランドやAIなどについてであったが、エネルギーも一つのテーマだった。
トランプ大統領は、1時間以上にわたるスピーチの中で、エネルギーに関して相当な時間を割いて述べている。 欧州は気候危機イデオロギーにとらわれてエネルギー政策を誤った、エネルギーの安定供給は脅かされ、光熱費は高騰して産業空洞化を招いている、といったものだ。
トランプの発言は、分かりやすいが、例によってかなり毒々しくて、上品とは言いがたい。
トランプとほぼ同内容だが、より明晰にかつ論理的に述べているのが米国エネルギー長官クリス・ライトの発言だ。
欧州の経済的自滅に対する批判に加えて、筆者は、以下の2つの発言に特に注目した。
1つ目は、EUが環境規制によってアメリカからのLNG輸入を妨げるような動きをしていることに対する批判である。具体的には、採掘・輸送時のメタン排出規制や、国境炭素税(CBAM)などのことである。このようなことでは、米国企業の欧州向けのLNG関連の事業活動が成り立たない、と警告を発している。
欧州は、対ロシア経済制裁をすることによって、それまでの安価なロシアのガス輸入が無くなった。アメリカからのLNG輸入に切り替えることで、欧州のエネルギー供給は何とか保たれているのが実態だ。そのLNGに対してペナルティを課すような欧州の環境規制の動きには、米国としては大いに違和感がある、ということだ。
2つ目は、CO2に関することである。石油の増進回収にCO2をすでに使っていることに触れ、将来的にその活動を拡大することで、CO2の排出抑制も可能だと仄めかしている。
トランプ大統領だけではなく、クリス・ライト長官も気候危機イデオロギーには全く賛成しないから、CO2のことには歯牙にもかけないかと思っていたが、もしもCO2を減らすというのであれば、この石油増進回収とその延長線上に現実的な答えがある、とを考えているようだ。
トランプ大統領の演説については、 動画に加えて、公式に全文がテキストで発表されている。
【動画】
【テキスト】
Davos 2026: Special Address by Donald J Trump, President of the United States of America
クリス・ライト長官の発言については動画しかなくて、公式なテキストはない。
【動画】
■
本稿の最後に、両氏の発言の要旨を簡単に箇条書きで記しておこう。
トランプ大統領の発言
- ヨーロッパは石油や天然ガスなどのエネルギー資源を持っているのに、それを使わず、風力や再生可能エネルギーに過度に依存している。
- 風車が国中に建てられているが、電力は不安定で、産業に十分なエネルギーを供給できていない。
- 高い電力価格と燃料価格が製造業を弱体化させ、雇用を失わせている。
- エネルギー政策の結果、工場や産業がヨーロッパから他地域へ移転している。
- ヨーロッパは気候政策を優先するあまり、経済成長を犠牲にしている。
- 米国は石油と天然ガスを増産し、エネルギー価格を下げて経済を強くしている。
- ヨーロッパは自らのエネルギー政策によって競争力を失っている。
- エネルギーを自給できなければ、国家として強くなれない。
- 現実的なエネルギー政策を取らなければ、繁栄も安全保障も守れない。
クリス・ライトエネルギー長官の発言
- 2010年以降、米国とヨーロッパは異なるエネルギー政策を選び、その結果は明確に分かれた。
- ヨーロッパでは気候変動対策を理由にエネルギー供給を制限し、価格を押し上げた。
- ドイツや英国では発電設備容量が増えたにもかかわらず、発電電力量が大きく減少した。
- 再生可能エネルギーに巨額の資金を投入したが、安定した電力供給は実現していない。
- 電気料金が2倍、3倍になり、工業生産が縮小した。
- エネルギーコストの上昇により、企業がヨーロッパを離れ、アジアへ移転した。
- ヨーロッパの環境規制やメタン規制が、米国からの天然ガス供給を困難にしている。
- 規制当局が企業の全世界事業を対象に評価する制度は現実的でない。
- エネルギー供給を減らす政策は、経済と安全保障の両方を弱体化させる。
- 安価で信頼できる石油と天然ガスを十分に使わなければ、ヨーロッパは再工業化できない。
■
関連記事
-
政策として重要なのは、脱原子力ではなくて、脱原子力の方法である。産業政策的に必要だからこそ国策として行われてきた原子力発電である。脱原子力は、産業政策全般における電気事業政策の抜本的転換を意味する。その大きな構想抜きでは、脱原子力は空疎である。
-
3月11日に行われた日本自動車工業会の記者会見で、豊田章男会長(トヨタ自動車社長)は「今のまま2050年カーボンニュートラルが実施されると、国内で自動車は生産できなくなる」と指摘した。キーワードはライフサイクルアセスメン
-
1月17日付日経朝刊に、日本原子力発電株式会社の東西分社化検討の記事が載っていました。 同社は、日本が原子力発電に乗り出した1950年代に電力各社の出資によって設立されたパイオニア企業で、茨城県東海村と福井県敦賀市に原子力発電所を持っており、他の電力会社に電気を卸しています。
-
ドイツでは各政党にシンボルカラーがあり、昨年11月までの政府は、社民党=赤、自民党=黄、緑の党=緑の三党連立だったので、「アンペル(信号)」と呼ばれた。しかし、今は黄色が抜けて、「レッド・グリーン(rot/grün)」政
-
「ポスト福島の原子力」。英国原子力公社の名誉会長のバーバラ・ジャッジ氏から、今年6月に日本原子力産業協会の総会で行った講演について、掲載の許可をいただきました。GEPR編集部はジャッジ氏、ならびに同協会に感謝を申し上げます。
-
東電の賠償・廃炉費用は21.5兆円にのぼり、経産省は崖っぷちに追い詰められた。世耕経産相は記者会見で「東電は債務超過ではない」と言ったが、来年3月までに債務の処理方法を決めないと、純資産2兆3000億円の東電は債務超過になる。
-
高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉決定を受けて、7日に政府の「高速炉開発会議」の初会合が開かれた。議長の世耕弘成経済産業相は冒頭で「高速炉の開発は必要不可欠だ」と述べた。これは高速増殖炉(FBR)に限らず広く高速炉(FR)を開
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクであるGEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。(2013年12月2日)
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間













