欧州、特にドイツにおける電気自動車の急激な普及

Tramino/iStock
ドイツでは先月ついにガソリン車のシェアを抜く
欧州においては官民一体でのEVシフトは急激に進んでいる。先月2021年11月のドイツのEV(純電気自動車:BEV、プラグインハイブリッド車:PHEV)のシェアは34%を超えてガソリン車を超えた。これは北欧などの小国を除くと初めてのことだと思う。またその他英国やフランスのEVのシェアも20%を大きく超えてきている。
この数字は少なくとも欧州においてはEVは既にマイナーな存在を脱して、主要車種になったことを意味し、更に急激な上昇が続けば「2030年を待たずに、そのずっと前に50%を超えてくることすら容易に予想できる。これは今までのどの予想を上回る速いペースである。(グラフ1及び2参照)

グラフ1:2021年11月の欧州主要三カ国でのEVのシェア
欧州各種資料から著者作成
またドイツの販売台数を見ると2020年及び2021年に大幅な増加を見ている。2021年の数字は11月までの販売台数を示し、例年税金の関係でEVの販売台数が一番多い12月を含めると今年は70万台を超えるのは確実と思われている。

グラフ2:ドイツの近年の自動車販売の推移
欧州各種資料から著者作成
ドイツで近年、EVが急速に普及した要因
(1)2020年及び2021年に魅力的なEVが多く発売された
「電気自動車」という単一車種があるわけでなく、売れるか売れないかは本来それぞれのメーカーのそれぞれの車種の魅力にかかっている。
ヨーロッパでは2020年及び2021年に多くの新型EVが発売され、それぞれベストセラーに名を連ねている。新車種は今までのEVの弱点をカバーしてすべて販売では成功を収めている。
- ルノー Zoe(2020年全面モデルチェンジ)
- VW D.3(2020年新発売)
- VW D.4(2021年新発売)
- Dacia Spring(2021年新発売)
- テスラ model Y(2021年新発売)
- Skoda Enyaq(2021年新発売)
- Peugeot 208e(2020年新発売)
(2)メルケル政権による強力な促進策
メルケル政権は、ドイツの最大の競争産業である自動車産業の国際優位を絶対に保つとの方針によりEVでのドイツの先行性維持のために
- 補助金の大幅増加
ドイツはEVに対する補助を年々ましており、来年からはその額が120万円弱にもなる。
これだけの補助があれば、イニシャルコストで内燃機関車と並ぶので、燃料費を始めとする年間維持費が安いEVに。
4000ユーロ→6000€ (2019年から)→7500€(2020年から)→9000€(2022年から)
- 充電インフラへの大幅補助
2025年までに100万箇所の公共充電スポットの整備の計画のもと、毎年大規模な充電スポットの新設が行われるとともに民間の充電スポットへの補助金も充実させてきている。
日本の現状
日本でも昨年、2020年に久しぶりにEVの新車が2車種デビューした。(ホンダのHonda-e、マツダのMX-30EV)。しかしホンダのHonda-eは発売1年でも総発売数が700台強と低迷しており、マツダはEVのみの台数を発表していないがホンダより更に発売台数は少ないと思われる。
これは欧州での新車デビューした各車種が最低でも「月間」5000台規模なのに比べて比較にもならない低さである。
日本でのEVの販売シェアは2020年は1%程度にとどまったと推察されており、今年も同じ程度でしかないと思われる。
販売台数でもシェアでも日本とドイツではEVの普及に埋めがたい大きな差がついており、日本は周回遅れどころか、3週遅れの現状である。
これからドイツを始めとする欧州勢に追いつくためにはもっと思い切った政策が必要な時期に差し掛かっていると言える。
(追記)中国も11月の販売実績ではEVのシェアは16%超えだったようだ。更に情報を集めて追加情報として提供したい。

関連記事
-
難破寸前政権 大丈夫かあ? 政権発足前夜、早くもボロのオンパレード・・・ 自民党総裁就任から、石破の言動への評価は日をおうごとに厳しさを増している。 思いつき、認識不足、豹変、言行不一致、有限不実行、はては女性蔑視——昭
-
丸川珠代環境相は、除染の基準が「年間1ミリシーベルト以下」となっている点について、「何の科学的根拠もなく時の環境相(=民主党の細野豪志氏)が決めた」と発言したことを批判され、撤回と謝罪をしました。しかし、この発言は大きく間違っていません。除染をめぐるタブーの存在は危険です。
-
20世紀後半から、人間は莫大量の淡水を農工業で利用するようになった。そのうち少なからぬ量は海に還ることなく蒸発して大気中に放出される。それが降水となることで、観測されてきた北半球の陸地における2%程度の雨量増加を説明でき
-
「海面が上昇する」と聞くと、地球温暖化を思い浮かべるかもしれない。しかし、地下水の過剰な汲み上げなどにより地盤が下がる「地盤沈下」によっても、海面上昇と類似の現象が生じることは、あまり知られていない。 2014年に公開さ
-
「脱炭素社会」形成の難問 アポリアとは、複数の理論や議論のうちどれが正しいのかについて合意ができない状態を表わすギリシャ語であるが、英語(aporia)でもフランス語(aporie)でも使われている。ともに「行き詰り」と
-
いまだにワイドショーなどで新型コロナの恐怖をあおる人が絶えないので、基本的な統計を出しておく(Worldometer)。WHOも報告したように、中国では新規感染者はピークアウトした。世界の感染はそこから1ヶ月ぐらい遅れて
-
アゴラ研究所の運営するエネルギー問題のバーチャルシンクタンクGEPRはサイトを更新しました。
-
石油がまもなく枯渇するという「ピークオイル」をとなえたアメリカの地質学者ハバートは、1956年に人類のエネルギー消費を「長い夜に燃やす1本のマッチ」にたとえた。人類が化石燃料を使い始めたのは産業革命以降の200年ぐらいで
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間