気候カルテル訴訟でバンガードが巨額和解金を支払う

2026年03月11日 07:00

artisteer/iStock

筆者は2025年8月に以下の記事を書いていました。

米国11州による気候カルテル訴訟が本格化

ついに、気候カルテルに対する大規模訴訟が動き出すようです。

(中略)

いまだにESG投資が世界の潮流などと言っている日本の産業界こそ注視すべき動向なのですが、相変わらず日本語メディアではまったく報じられていません。

2024年11月に米国11州の司法長官がブラックロック、ステートストリート、バンガードに対して気候カルテル訴訟を起こし、2025年8月に3社の棄却申し立てが裁判所によって却下され訴訟が本格化していました。

あれから半年が経過し、バンガードが巨額の和解金支払いに合意したようです。

Attor­ney Gen­er­al Pax­ton Secures His­toric, Indus­try-Chang­ing Agree­ment with Van­guard to Pro­tect the Coal Indus­try and Empow­er Investors

ケン・パクストン司法長官は、バンガードとの間で画期的かつ前例のない和解を成立させ、資産運用会社ブラックロック、ステートストリート、バンガードに対する複数州による訴訟の一部を解決した。和解の一環として、バンガードは業界で最も強力な受動的運用方針を約束し、投資家に議決権行使の権限を付与することに合意した。これは業界初の試みである。この画期的な和解は、ESG主導の市場操作に対する史上最も重要な執行措置であり、競争力のある低コストの石炭産業を確保するとともに、大規模機関投資家の行動規範を根本的にリセットする。

パクストン司法長官の訴訟は、「グリーンエネルギー」を装って石炭価格を吊り上げようとしたブラックロック主導のカルテルに対抗し、全米における石炭コスト(ひいては電力価格)の引き下げをめざすものである。ブラックロックの行為は同社及び共謀者らに巨額の利益をもたらし、全米の消費者に電気料金の値上げを強いた。さらにアメリカ国民を犠牲にして利益を追求するため、ブラックロックは非ESGファンドへの投資を選択した数千人の投資家をも欺いた。

「バンガードが投資家を保護する選択をし、委任状投票の選択肢を通じて投資家に力を与える点で業界のリーダーとなったことを喜ばしく思います。これは機関投資家にとって新たな基準を確立するものであり、全ての企業が従うべきものです」とパクストン司法長官は述べた。

「バンガードはこの件を解決するために適切な措置を講じましたが、ブラックロックとステートストリートは州法を無視し続け、アメリカのエネルギー産業を損なう反競争的な策略に関与し、彼らのサービスを利用して投資する人々を弱体化させています。石炭は、増大するアメリカのエネルギー需要を支えるために不可欠な産業です。私は、アメリカのエネルギーを危険にさらす『目覚めた』アジェンダを推進しようとする投資大手によるあらゆる試みを根絶やしにし、破壊し続けます」

パクストン司法長官が交渉した初の和解案のもと、バンガードは顧客の収益性よりもESG目標を押し付けないことを約束した。例えば、バンガードは株式を使って(a)ポートフォリオ企業の事業戦略を指示したり、(b)ポートフォリオ企業が何らかの形で行動(または行動しない)ことに同意しなければ持株から撤退すると脅したり、(c)取締役や株主提案をポートフォリオ企業に指名したりしない。バンガードはまた、州に2,950万ドルを支払うことにも合意した。

この和解金、日本円だと45億円超になります。これほどの大規模訴訟で和解した資産運用会社が融資先の企業に対して強制していたのがESG目標、脱炭素目標だったわけです。

しかし、ESG強要をやめるバンガードはまだマシです。訴訟を継続するブラックロックとステートストリートがどのような結末を迎えるか、引き続き注視します。

なお、上記はテキサス州司法長官ウェブサイト上でプレスリリースとして掲載されているのですが、相変わらず日本のメディアはまったく報じてくれませんね。やれやれ。

This page as PDF

関連記事

  • 前回に続き、最近日本語では滅多にお目にかからない、エネルギー問題を真正面から直視した論文「燃焼やエンジン燃焼の研究は終わりなのか?終わらせるべきなのか?」を紹介する。 (前回:「ネットゼロなど不可能だぜ」と主張する真っ当
  • IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 今回のIPCC報告では、新機軸として、古気候のシミュレー
  • エネルギー危機が世界を襲い、諸国の庶民が生活の危機に瀕している。無謀な脱炭素政策に邁進し、エネルギー安定供給をないがしろにした報いだ。 この年初に、英国の国会議員20名が連名で、大衆紙「サンデー・テレグラフ」に提出した意
  • 東京都や川崎市で、屋上に太陽光パネル設置義務化の話が進んでいる。都民や市民への事前の十分な説明もなく行政が事業を進めている感が否めない。関係者によるリスク評価はなされたのであろうか。僅かばかりのCO2を減らすために税金が
  • 2015年のノーベル文学賞をベラルーシの作家、シュベトラーナ・アレクシエービッチ氏が受賞した。彼女の作品は大変重厚で素晴らしいものだ。しかし、その代表作の『チェルノブイリの祈り-未来の物語』(岩波書店)は問題もはらむ。文学と政治の対立を、このエッセイで考えたい。
  • 筆者はかねがね、エネルギー・環境などの政策に関しては、科学的・技術的・論理的思考の重要さと有用性を強調してきたが、一方で、科学・技術が万能だとは思っておらず、科学や技術が人間にもたらす「結果」に関しては、楽観視していない
  • IPCCは10月に出した1.5℃特別報告書で、2030年から2052年までに地球の平均気温は工業化前から1.5℃上がると警告した。これは従来の報告の延長線上だが、「パリ協定でこれを防ぐことはできない」と断定したことが注目
  • パリ協定をめぐる対立 6月のG20サミットは日本が初めて議長国を務める外交面の大舞台であった。保護主義との闘い、データ流通、海洋プラスチック等、様々な論点があったが、大きな対立軸の一つになったのが地球温暖化問題、なかんず

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑