原発の安全審査ペースが鈍化したのはなぜか
【概要】原子力規制委員会の原子力発電所の安全審査ペースが急速に鈍化している。2016年下期に本体施設3基を許可したのをピークに、その後、期ごとの許可実績が2、2、1、0、0基と減っている。
審査している原発が無くなったのならわかるが、審査中の原発は12基もあるのである。なぜ審査ペースが鈍化したかが不可解である。
ひとつの可能性として挙げられるのは特重施設の審査増加で、2016年度以降、特重施設の審査が増えている。特重施設には設置許可7件、工事計画認可7件の計14件の許認可を発行しているのである。

(原子力規制委員会 定例記者会見(2019年07月31日)動画から:編集部)
本体施設の設置変更許可実績
原子力規制委員会の最大の任務は原子力発電所の再起動である。新規制基準の安全対策を備えていることを確認した原子力発電所に順次、設置変更許可を発行している。
図1には規制委がこれまでに発行した本体施設の設置変更許可の実績を半期ごとに括って示す。

気になるのは2016年下期の3件をピークにその後漸減を続け、2018年下期と2019年上期は設置変更許可が全く発行されていないことである。
審査する原子力発電所が無くなった訳ではない。審査中の原子力発電所は12基もあるのである。この他、いずれ申請するために申請の準備している原子力発電所が10基もあるのである。
本体施設と特重施設の許認可件数実績
では、規制委は何に時間を割かれているのだろうか。審査に労力を要する作業が増えたに違いない。その原因を調べるため、設置変更許可と工事計画認可の実績を調べた。
規制委がこれまでに発行した本体施設の設置変更許可は15件、本体施設の工事計画認可は12件で、併せて27件である。
規制委ホームページにはこの他、特重施設の設置変更許可7件、工事計画認可7件の計14件の許認可を発行したとされている。
これらの時系列推移をみると図2の通りとなる。このグラフを見ると、規制委はこの2年間遊んでいたのではなく、特重施設の許認可発行に時間を割かれたため本体施設の許認可ペースが鈍化したのかも知れない。

特重施設の割合の変化
図2で視覚的に理解された上述のことを定量的に分析したのが図3である。規制委の業務を原子力発電所に絞り、本体施設と特重施設の許認可発給割合だけで判断すると、図3のとおり、この1年間は特重施設に特化していることになる。

もちろん、これは仮定によるものであろうが、審査ペースが鈍化したのは特重施設の影響が大きかったことは確かだと思われる。
関連記事
-
太陽光発電や風力発電のコストに関して我が国ではIEAなどの国際機関の研究報告結果で議論することが多いが、そもそも統計化するタイムラグが大きい事、統計処理の内容が明らかにされないためむしろ実際の入札での価格を見るほうが遥か
-
昨年発足した原子力規制委員会(以下、規制委員会)の活動がおかしい。脱原発政策を、その本来の権限を越えて押し進めようとしている。数多くある問題の中で、「活断層問題」を取り上げたい。
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクGEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。
-
鹿児島県知事選で当選し、今年7月28日に就任する三反園訓(みたぞの・さとし)氏が、稼動中の九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)について、メディア各社に8月下旬に停止を要請する方針を明らかにした。そして安全性、さらに周辺住民の避難計画について、有識者らによる委員会を設置して検討するとした。この行動が実現可能なのか、妥当なのか事実を整理してみる。
-
NRCが工事ミスを指摘 WH(東芝)がなぜ多額の負債を負ったのか、いまだに狐に摘まれた思いをしている人が多い。これまで報道された情報によれば「12年の早い段階までにNRCの検査官が原子炉下部の鋼材が不適切に据え付けられて
-
この4月に米国バイデン政権が主催した気候サミットで、G7諸国はいずれも2050年までにCO2ゼロを目指す、とした。 コロナ禍からの経済回復においても、グリーン・リカバリーということがよく言われている。単なる経済回復を目指
-
ことの経緯 8月25日、東京電力はかねて懸案である第一原子力発電所に100万トン以上貯留されているトリチウム処理水の海洋放出の具体的な方法を発表した。処理水は、沖合1kmの放水口から放出される方針だという。 今年4月13
-
中国で石炭建設ラッシュが続いている(図1)。独立研究機関のGlobal Energy Monitor(GEM)が報告している。 同報告では、石炭火力発電の、認可取得(Permitted) 、事業開始(New projec
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間














