「非政府」有志エネルギー基本計画を大幅改訂:現実的な国益のための11提言

bymuratdeniz/iStock
2024年2月に発表した「非政府」有志エネルギー基本計画を大幅改訂しました。新たに著者も加わり、加筆も多岐にわたり、合計290ページの大部になりました。著者は以下の通りです:
杉山大志・野村浩二 (編著), 飯倉穣・ 岡芳明・ 岡野邦彦・ 加藤康子・ 小島正美・ 澤田哲生・ 巽直樹・ 田中博・ 戸田直樹・ 中澤治久・ 南部鶴彦・ 平井宏治・ 松田智・ 室中善博・ 薬師院仁志・ 山本隆三・ 山口雅之・ 渡辺正(著)(2026). 『非政府有志によるエネルギー基本計画(第7版)』5月.
全文(PDF)は上記のリンクからダウンロードできます。
政策提言の骨子はこれまでと変わりありませんが、世界が分断を深め、ウクライナやイランでの紛争が起きるなどの国際情勢の変化を受けて、脱炭素や再エネを最優先するのではなく、安全保障と経済を重視した現実的なエネルギー政策を採るべきであるという本報告の提言はいっそう適切なものになっていると思います。
以下に、政策提言の要旨のみを貼り込んでおきます。
「非政府有志によるエネルギー基本計画」(以下、本計画)では、安全保障と経済成長を重視したエネルギー政策として、「エネルギードミナンス(優勢)」を提唱する。エネルギードミナンスとは、米国共和党で用いられてきた概念である。それはすなわち、豊富で、安定し、安価なエネルギーを供給することを指す。それによって、日本が経済発展を遂げ、防衛力を高め、自由、民主といった普遍的価値を守り、発展させることが可能になる。
エネルギードミナンスを確立するために、我々は以下の11項目にわたる提言をする。
- 光熱費を低減する。電気料金は東日本大震災前の水準を数値目標とする。エネルギーへの税や賦課金等は撤廃ないし削減する。
- 原子力を最大限活用する。全電源に占める比率50%を長期的な数値目標とする。
- 化石燃料の安定利用をCO2規制で阻害しない。
- 太陽光発電の大量導入を停止する。
- EV化により自動車産業振興を妨げない。
- 再エネなどの化石燃料代替技術は、性急な導入拡大をせず、コスト低減を優先する。
- 過剰な省エネ規制を廃止する。
- 電気事業制度を垂直統合型に戻す。
- エネルギーの備蓄およびインフラ防衛を強化する。
- CO2排出総量の目標を置かず、部門別の排出量の割当てをしない。
- パリ協定を代替するエネルギードミナンス枠組みを構築する。
現行のエネルギー政策は、極端なCO2排出削減目標に束縛され、かつイデオロギー的に技術選択が太陽・風力・EVなどに偏狭に絞られているゆえに、コストが高くて持続不可能に陥っている。これに対して本計画は、原子力、天然ガスの安定供給や、エネルギーの効率的な利用や生産性の改善など、現実的な国益を推進するものであり、経済成長を毀損することなくCO2を削減するという点において、より持続可能で実効的である。
■
関連記事
-
IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 京都の桜の開花日が早くなっているという図が出ている(図1
-
杉山大志氏の2023年2月4日付アゴラ記事で、電力会社別の原子力比率と電気料金の相関が出ていました。原子力比率の高い九州電力、関西電力の電気料金が相対的に抑えられているとのことです。 この記事を読みながら、その一週間前に
-
アゴラ研究所は、9月27日に静岡で、地元有志の協力を得て、シンポジウムを開催します。東日本大震災からの教訓、そしてエネルギー問題を語り合います。東京大学名誉教授で、「失敗学」で知られる畑村洋太郎氏、安全保障アナリストの小川和久氏などの専門家が出席。多様な観点から問題を考えます。聴講は無料、ぜひご参加ください。詳細は上記記事で。
-
政府は脱炭素政策を進めているが、電気料金がどこまで上がるかを分かりやすい形で公表していない。本稿では、公開資料を元に具体的に何円になるのか計算してみよう。 日本の電気料金は東日本大震災以降、大幅に上昇してきた(図1)。
-
前回に続いて、環境影響(impact)を取り扱っている第2部会報告を読む。 今回は朗報。衛星観測などによると、アフリカの森林、草地、低木地の面積は10年あたり2.4%で増えている。 この理由には、森林火災の減少、放牧の減
-
小泉環境大臣がベトナムで建設予定の石炭火力発電所ブンアン2について日本が融資を検討していることにつき、「日本がお金を出しているのに、プラントを作るのは中国や米国の企業であるのはおかしい」と異論を提起している。 小泉環境相
-
7月25日付けのGPERに池田信夫所長の「地球温暖化を止めることができるのか」という論考が掲載されたが、筆者も多くの点で同感である。 今年の夏は実に暑い。「この猛暑は地球温暖化が原因だ。温暖化対策は待ったなしだ」という論
-
5月13日に放送した言論アリーナでも話したように、日本では「原子力=軽水炉=福島」と短絡して、今度の事故で原子力はすべてだめになったと思われているが、技術的には軽水炉は本命ではなかった。1950年代から「トリウム原子炉の道?世界の現況と開発秘史」のテーマとするトリウム溶融塩炉が開発され、1965年には発電を行なった。理論的には溶融塩炉のほうが有利だったが、軽水炉に勝てなかった。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間

















