欺瞞的なESG開示やグリーンウォッシュを行うとこんな制裁をくらうかも

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去る2026年4月22日、ネブラスカ州、テキサス州、フロリダ州、アラスカ州など米国23州の司法長官が連名で、フィッチ、ムーディーズ、S&Pグローバルの世界3大格付け機関に対し、ESG評価を前提とした格上げ・格下げをやめるよう警告する書簡を送りました。
ヒルガース司法長官が主要信用格付け機関に書簡を送付 ESG方針への懸念を表明 |ネブラスカ州司法長官マイク・ヒルガース
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今回は、司法長官から3大格付け機関に対して出された質問をご紹介します。
これ、すべての質問に対する回答を45日以内に提出するよう求められています。筆者が担当者だったら泣きます。読了まで8分ほどいただくのでとても長いのですが、欺瞞的なESG開示やグリーンウォッシュを行うと司法からこんな制裁をくらう可能性があるという戒めになりますので、ぜひ最後までご覧ください。
金融機関やESG評価を実施する側はもちろんですが、ESG評価を受ける側の企業の場合でも、自社のサステナビリティ方針やトップメッセージなど外部に発信している内容と照らしながら見ていただければチェックシート代わりになります。危うい日本企業がたくさんあります。
格付け機関への質問
1)貴社は、新たな情報が入手可能になり次第、その手法に沿って格付けを更新すると述べている。貴社が化石燃料セクターまたは化石燃料企業を格下げした根拠となった前提が誤りであることが証明されたにもかかわらず、撤回していない理由を説明すること。
2)貴社が行った以下の予測それぞれについて、貴社がその予測が誤りであったと認めているかどうか、また、認めている場合、なぜ現在も格下げを維持し続けているのか説明すること。
- 貴社が予測したように、各国政府は気候変動規制を強化していない。「急速な低炭素移行の政策シナリオ」(フィッチ)、「気候変動に関する将来の規制要件という新たな脅威」(ムーディーズ)
- 貴社が予測したように化石燃料の需要はピークに達していない。フィッチは「需要予測の引き下げ」と「世界の石油需要の伸びの鈍化」を、ムーディーズは「炭素移行リスク」と「低炭素経済」を、S&Pは「炭化水素需要のピーク」時期から「座礁資産」が「加速し続ける」と予測していた。IEAは現在、石油・ガス需要と価格は少なくとも2050年まで増加し、石炭は2040年まで主要な電力源であり続けると予測している。
- 社会は、貴社が予測したように再生可能エネルギーを採用していない。「需要予測の低下」(フィッチ)、「炭素排出量削減に向けた社会的な取り組み」(ムーディーズ)、「再生可能エネルギーの市場シェア拡大」および「再生可能エネルギー代替手段の採用と移行の加速」(S&P)といった予測とは異なり、電気自動車(EV)などの再生可能エネルギーの選択肢は概ね拒否されている。
- S&P:S&Pが予測したように「ESG投資義務の採用」は拡大せず、ネットゼロ協定の解消、環境提案に対する株主の支持の崩壊、ESGファンドからの資金流出の継続などにより、むしろ後退している。
3)前問の予測それぞれについて、貴社がその予測を行うのに十分な将来見通しを持っていると判断した理由を、貴社が採用しているとされる基準に基づいて説明すること。
- フィッチ:ESG要因は、「これらの要因が発生することを予測できる確実性のレベル」に応じてのみ組み込まれます。
- ムーディーズ:「ESG要因は、これらの傾向を把握できる場合」に限り、格付けに組み込まれます。
- S&P:財務予測は、S&Pが「企業の潜在的な財務実績を十分に明確に把握できる」期間についてのみ提供されます。
4)S&Pが「セクター別基準の適用を通じて」ESG要素を取り入れていると主張しながら、石油・ガスおよび鉱業のセクター別基準にESG要素を一切記載していないにもかかわらず、化石燃料関連の格下げを実施・維持するためにESG要素に依拠した理由を説明すること。
5)証券取引法第15条は、NRSRO(国家格付け機関)に対し、信用格付けの発行に関連する利益相反を開示することを義務付けている。貴社は、NRSROフォームまたは関連する添付書類において、ESGへのコミットメント(国連責任投資原則(UN PRI)、ネットゼロ金融サービスプロバイダーアライアンス(NZFSPA)など)を実際または潜在的な利益相反として特定したことがあるか、また特定した場合、貴社の格付け機関はこの利益相反を考慮して、格下げまたは既存の信用格付けを再評価したかどうかを説明すること。
6)貴社は、ESG問題が必ずしも重要ではないことを認めている。この認識を踏まえ、貴社がUN PRIに対し、「ESG問題を意思決定プロセスに組み込む」こと、そして「ESGを体系的かつ透明性のある方法で信用格付けおよび分析に組み込む」ことを約束した理由を説明すること。
7)ムーディーズ/S&P:貴社は、NZFSPAへの加盟時にネットゼロの「加速」と「達成」を約束し、「すべての関連サービスおよび製品を2050年までに、あるいはそれ以前にネットゼロ温室効果ガス排出量を達成できるよう整合させ、パリ協定への準拠を事業の中核に拡大・主流化する」と約束していたにもかかわらず、「独立性」を主張したり、「独立性」の確保をめざしたりした理由を説明すること。
8)S&P:S&Pは「強靭で持続可能な未来という共通の目標」を公然と掲げていたにもかかわらず、「独立性」を主張していた理由を説明すること。
9)ムーディーズ:ムーディーズは「ネットゼロへの移行を支援するための資本の流れを加速する」という目標を発表していたにもかかわらず、「独立性」の確保をめざしていると主張していた理由を説明すること。
10)貴社がUN PRIにコミットした後、評価手法に変更を加えた場合は、その内容を説明すること。
11)ムーディーズ/S&P:貴社がNZFSPAにコミットした後、評価手法に変更を加えた場合は、その内容を説明すること。
12)貴社のUN PRIおよび/またはNZFSPAへのコミットメントが、貴社の顧客にとって重要でない理由、およびこれらのコミットメントが貴社の顧客の「情報全体の構成」を変更しない理由を説明すること。
13)貴社が以下の各問題に対処するために維持している内部統制(もしあれば)について説明すること。
- 貴社のUN PRIに基づくESGを格付けに組み込むというコミットメントに関連する実際または潜在的な利益相反。
- ムーディーズ/S&P:貴社のNZFSPAに基づくすべての商品またはサービスにおける「ネットゼロ達成」というコミットメントに関連する実際または潜在的な利益相反。
- 貴社の「私たちが望む未来:持続可能な開発が金融市場の中核となる世界」に沿った財務上の意思決定を行うという誓約に関連する実際または潜在的な利益相反。
- S&P:S&Pが財務上の意思決定を「強靭で持続可能な未来という共通の目標」に整合させるという誓約に関連する、実際または潜在的な利益相反。
- 時間軸の欠如や、「十分に明確な」情報(S&P)、「ESG要因の予測可能性の確実性のレベル」(フィッチ)、または「トレンドの可視性」(ムーディーズ)といった曖昧な基準によって、貴社の格付けが、貴社のESG目標に整合するように「誘導」されたかどうか。
- 貴社がESG関連のコンサルティングサービス商品を提供しながら、同時にESGを信用格付けに組み込んでいることに関連する、実際または潜在的な利益相反。
14)フィッチ/S&P:ESG要因を一定の時間軸に限定していたのに対し、無期限の時間軸を採用するようになった理由を説明し、この変更に関連する文書を提出すること。
15)格付け機関の役員がクリーンエネルギー企業、再生可能エネルギー企業、または排出量開示の増加に関連する企業に対して有するすべての経済的利害関係(株式保有や企業における役職を含む)を列挙すること。
16)格付け機関の取締役会メンバーがESG(クリーンエネルギー、再生可能エネルギー、排出量開示を含む)に関して行ったすべての公式声明を列挙すること。
17)格付け機関が、2024年にNature誌に掲載されたKotz、Levermann、Wenzによる論文「気候変動の経済的影響」に基づき、全部または一部において行った措置(格付け措置を含む)を特定すること。回答で特定した措置については、重大な誤りによる論文の撤回を受けて、それらの措置が再評価または撤回されたかどうかを説明すること。
18)格付け機関は、化石燃料需要の増加と、化石燃料生産を優遇する連邦政策の継続的な移行にもかかわらず、複数の化石燃料生産州の格付けを引き下げ(「州の格下げ」)、あるいはこれらの州の化石燃料との関連性をマイナス要因として評価した。以下の各州格下げ予測について、貴社の格付け機関がその予測が誤りであったと判断するかどうかを説明すること。
- フィッチ:アラスカ州は「現在予想されているよりも急速に炭素系燃料からの転換が加速する」リスクに直面している。
- ムーディーズ:アラスカ州の「石油生産産業への高い依存度」はマイナス要因とはなっていない。IEAは、現在の政府政策の下では、石油・ガス需要は少なくとも2050年まで増加すると予測している。
- S&P:連邦政府はS&Pの予測とは異なり、「炭素排出規制を強化していない」。むしろ規制を緩和している。
- S&P:S&Pが予測した「再生可能エネルギーへのエネルギー転換の加速」は起こらず、むしろエネルギー転換は減速、あるいは逆転した。
19)前問の予測それぞれについて、格付け機関が採用しているとされる基準に基づき、なぜ将来を十分に明確に予測できると判断したのかを説明すること。
- フィッチ:ESG要因は、「これらの要因が発生することを予測できる確実性のレベル」に応じてのみ組み込まれます。
- ムーディーズ:「ESG要因は、これらの傾向を把握できる場合に限り、格付けに組み込まれます。」
- S&P:財務予測は、「企業の潜在的な財務実績を十分に明確に把握できると確信できる期間」についてのみ提供されます。
20)格付け機関が州の化石燃料への依存をマイナス要因と見なしているかどうか、また、もしそうであれば、その理由を説明すること。国際エネルギー機関(IEA)は、石油・ガス需要と価格は2050年まで上昇し続け、石炭は2040年まで主要な電力源であり続けると予測している。
21)S&P:S&Pが「連邦政府の政策優先順位の変化」への懸念に基づき、化石燃料生産州の格付けを引き下げ続けている理由を説明すること。S&Pの論理が、連邦政府の政策環境が急速に変化する可能性があるというものであれば、S&Pが規制強化を予測していたバイデン政権時代の過去の格下げにおいて、なぜその変化が考慮されなかったのかを説明すること。
22)S&P:S&Pは、州が化石燃料からの税収に大きく依存していることを批判する一方で、化石燃料採掘に対する税金を徴収していないことも批判しているように見えるのはなぜか説明すること。
23)フィッチ/S&P:前の質問で議論された各手法の逸脱と利益相反を踏まえ、貴社が自社の格付けを「独立」かつ「客観的」であると主張する理由を説明すること。
24)ムーディーズ:前の質問で議論された各手法の逸脱と利益相反を踏まえ、ムーディーズが自社の格付けにおいて「誠実性」と「独立性」を確保しようとしていると主張する理由を説明すること。
25)ネットゼロ資産運用会社イニシアチブの参加者(貴社の顧客も間違いなく含まれていた)は、以前、「投資家が利用できる商品やサービスが、2050年までに、あるいはそれ以前に世界のネットゼロ排出量を達成するという目標と整合していることを確認するため、信用格付け機関と連携する」と約束していた。
- 貴社の顧客は、貴社の格付け商品やサービスがネットゼロ目標と整合しているかどうかについて、貴社と協議したか?
i.もしそうであれば、なぜ貴社はNRSRO様式別紙6においてこの利益相反を開示しなかったのか?
26)貴社がESG要因を全部または一部根拠として格下げした化石燃料企業ごとに、その企業の主要財務指標(負債資本比率、インタレスト・カバレッジ・レシオ、フリー・キャッシュフロー、負債対EBITDA比率)を、他セクターの同等格付けまたはそれ以上の格付けの企業の財務指標と比較すること。格下げされた化石燃料企業の財務指標が、他セクターのより高い格付けの企業の財務指標と同等またはそれ以上である事例があれば、その内容を説明すること。
27)貴社の総収益のうち、ESG関連の製品およびサービスから得られる割合、および貴社がUN PRIの信用リスクおよび格付けにおけるESGに関する声明に署名して以来、その割合がどのように変化したかを述べよ。
海外の報道によれば、S&Pグローバルの広報担当者は「これらの問題を非常に深刻に受け止めており、現時点ではこれ以上のコメントはない」と答え、ムーディーズの広報担当者は「司法長官からの書簡を精査しており、適切なルートを通じて対応する」と述べ、フィッチはコメントを出さなかったそうです。
格付け機関側がどのように対応するかは今後の推移を見守るしかありませんが、米国ではESGに対してお上から大変厳しい指摘がなされ、合わせて公平な報道も少なからず見られます。
世界的にも、ESG投資が退潮し、過去の評価手法や経済活動・市民生活への悪影響等に対して様々な疑義や指摘がなされています。ところが、日本国内ではいまだに「ESGは世界の潮流だ」といった報道であふれかえっています。
メディアも政府も産業界も頼りにならないため、個社単位で判断するしかない状況です。沈む船から降り遅れませぬように。
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